文字で語る音語

音で物語を創るボカロPが文章を書くブログです

#ボカコレ2021春 オススメ曲10撰 ~2021年のその先、ポスト「ボカロっぽさ」のボカロ曲~

The VOCALOID Collection 2021 Spring.
いやーーー。2回め開催めでたい。

というわけで、今回は10選を作ったので御覧ください。

 

 

 

  【shino】ハルダチ/ 初音ミク

明朗で、ストレートな音作りに、少しだけの寂寞感が同居している王道ポップス。人間はおしなべてこういう「青春」が好き。(クソデカ主語)
シンセのループ音のキラキラ感、跳ねる感じ、音色の少しの切なさ、ミクの少し線の細くて可憐な歌わせ方、ギターの端切れの良さ、そしてシンプルに徹して下支えするドラムとベースの音作り……これらの要素のトータルの調和が極めて高クオリティ。

そうした音で紡がれる「青春」の切なさを感じて欲しい一曲。

 

 白日夢 / Osanzi feat.初音ミク

OsanziのOsanziだからこその音の構築美。
ミクのボーカルの吐息感が極めて繊細で、かつ艶めかしい。ダンサブルに体が揺れる音でありつつも、音の緩急の付け方や歌声の胸を締め付けるような感情深さ、シンセサイザーのノイズ音などの諸要素のバランスも相まって、じっくりと聴いてしまう一曲。

彼の曲で一番好きといっても過言ではない。

 

 #ボカコレ - ネガイボシ / 市瀬るぽ feat.鏡音リン

メロディの可愛さが半端ない。さすがの市瀬るぽの鏡音リンの声と言う感じで、一直線に心に届く明るく伸びやかな歌声に、所々の少しだけ切ない歌詞、和声感が胸を掴む楽曲。
るぽ曲といえばボーカルのカットアップ処理で、本楽曲もカットアップのエレクトロポップ感は極めて魅力的なのだが、ドラムンベースというジャンルの若干速いBPMにおいては良い意味でそれらの要素がさり気なく存在しているように思える。

爽やかで心地よく、すこしだけ切なく、けれど快活さは決して失わない、「鏡音リン」というキャラクター性そのもののような曲。

 

 氷に鏤む/初音ミク

読み方は「こおりにちりばむ」が正解とのこと。
冒頭の1音1音から深い痛みのような感情が、消して昂らない冷静さで込められている楽曲。5分間という長い楽曲ながら、むしろ短く感じさせるのは込められた感情の密度の高さ故か?
音数が少ないのに、けして薄くならず心をつかんで離さない緊張感から、一つ一つ大切に音が作られたことが感じられる。
盛り上げては寸前で抑え込み、抑え込みという過程を経て、最後のサビすら終わったあとの後奏で声にすらならない感情を吐露するような音作りは必聴。

最後まで聞くべき曲。

 

 ロータスイーター/青栗鼠(feat.歌愛ユキ)

「20年、21年のボカロ曲トレンドの最先端、或いはその先」といっても何も過言ではない一曲。
少しオールドなダンスディスコミュージック的メロディ・和声感に、最新のEDMのシンセ音やジャズ要素でオケを構築していくのは極めて現代的なのだが、本楽曲はその中でも極めて高クオリティな音。20年的なエレクトロスウィング要素の洒脱さはかなり脱色され、メロディの懐かしさが香り立つその音は「洒脱」というより「お洒落」という単語が近しいように思える。

この音作りは21年のボカロ曲のトレンドになるか否か。

 

 【GUMI】二重瞼のグレーズ【オリジナルMV】- aquabug

音が繊細なクラブミュージックが好きな人、EDMの低音の重厚さが苦手でクラブミュージックを敬遠してしまう人に聴いて欲しい一曲。
キックの浮遊感、ピアノのパッセージの繊細なきらびやかさ、GUMIのボーカルの声質、その他様々な音の処理が調和して、胸に染み込むような一曲となっている。

「通勤時などに聞きたい」クラブミュージック。

 

 DOWNTOWNfeat.初音ミク

一曲全体をまとめ上げるギターの音作りが極めて魅力的。
少しだけ大人びた切ない曲調は、寂寞か、諦念か、あるいはそれとも?
ギター、ボーカル、ドラムス、ストリングス…曲全体で各楽器が色々と複雑なことをやっているのだが、それをシンプルに聞かせる音作りがとても良い。

一人でいるときに聞きたい、そんな音楽。

 

 おとぎの惑星 / 初音ミク

胸の痛みと、憧憬と、様々な感情を込めたバラード。
アコギのアルペジオと、エレキギターの音作りが極めて切ない。

込めた感情の深さを考えると一つ間違えれば過剰になってしまうところだが、ミクの歌声の淡々とした声質やオケの緩急の付け方ゆえに、痛みを美しさとして最後まで聞き入ってしまう。

そんな「感情で聞く」ための一曲。

 

 先生、/夜to臥 feat. 初音ミク

後悔と、愛情、愛情という名の執着を込めたバラードソング。
本楽曲は、むしろ「淡々」という言葉とは対極に、感情で胸を抉って離さないそんな楽曲。叫ぶようなミクの声が痛々しくも、愛おしい。

歌詞は、素直に解釈すると夏目漱石の「こころ」へのアンサーソングとなるのだろうが、誰しも本当に多くのものを失い喪った2020年を経た21年、誰しもなにか重なるところが見つかるのではないだろうか。

そんな痛みを叫ぶためのバラードソング。

 

 Printemps / lazuli feat. GUMI

愛しさと、ごく身近な切なさを、未来への前向きさを込めて唄うためのバラードソング。
ギター、ピアノ、ドラムス、ストリングス、ベース、ボーカルの音作りは、そしてメロディワークとコード進行の描くそれは、「J-Popバラード」の王道そのもの。そんな王道の2021年の回答と言えよう。ミックスも、メロディも、歌詞も、全てがエモーショナル。

胸を優しくよぎる切なさが、王道の良さを教えてくれる。そんな一曲。

 

まとめ

今回のボカコレは、投稿作がとてつもなく多かったのですが(2000作超!!???)
そのぶん、曲調も前回以上に幅広く、ボカロ界隈の裾野の広がりを感じるものだったように思います。

前回のボカコレは、(今回と比べると、ですが)クオリティの高い楽曲はある程度方向性が存在していたように思います。

「たじろぐほど明確に後ろ向き(諦念、自他への嫌悪、攻撃性etc.)、それを隠そうともしていないのにトータルの音は洒脱極まるというアンビバレンツ」

前回ボカコレ29選の記事) 

それは、ある意味で19年~20年にかけて育ってきたボカロ曲の「ボカロっぽさ」の集大成でもあったと思いますし、「商業シーンにデビューしたボカロP」じゃないボカロPもそれだけ音作りの実力が高いということを見せつけてくる凄まじさがあったと思います。

一方で、そのように「クオリティが高い」からこそ、2020冬のボカコレでの投稿曲はある意味「ボカロ曲の到達点」然とした感覚を覚えたのも正直な感情でした。

だからこそ、なのか。
今回のボカコレにて、前回のボカコレで流行った楽曲のトレンドとは全く別の、裾野の広い多様な曲調の楽曲が多く現れたように見えました。
個人的にはとても嬉しい。

文化というのはそもそも、一つの方向性がジャンルとして定着する頃には、すでに次の方向性の邦画が現れているものですが、
ボカロにおいては(人口の多さも相まって)、そのサイクルが本当に早い。年々速まっているのではとも思います。

それは、ボカロPの身からしたら大変ではあるのですが、総体としては良いことなのだろうなと思います。

今後も、合成音声を使った創作において、いい音楽がたくさん生まれることを祈って。

 

P.S.自分の曲。

自分はこんな曲を書きました。
前回ボカコレにて投稿した「罪状」アンサーソングです。

罪状にて描いた「拭い難い憎悪と自己嫌悪」に応えるため、捨てられない感情にただ寄り添って一緒に堕ちていくほどの感情を描いています。

どうかよろしくお願いいたします。

あ、罪状、つい最近YouTubeで1万再生突破しました。YouTube広告とか付けてなくて1万到達なの、割とガチで強いと思うのでみんな聴いて欲しい。よろしくお願いいたします。